飛鳥山動物病院 徒然日記

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【文献紹介】猫の下眼瞼内反には、複数の方法を組み合わせた外科的整復が効果的なようだ (Hotz-Celsus法・外眼角閉鎖縫合・眼瞼楔型切除)

White JS., et al. 
"Surgical management and outcome of lower eyelid entropion in 124 cats. 

Vet Ophthalmol. 2012 Jul;15(4):231-5

 PMID:22129140

アブストラクト>
タイトル
:眼瞼内反を有する猫124頭への外科的管理と予後について

研究デザイン
:回顧的研究

動物
 下眼瞼内反への外科的整復が行われた猫124頭(200眼)
   年齢分布は、1 歳未満が23頭、2〜8歳が52頭、8歳以上が49頭である。

方法:医療記録を再調査し、対象猫の臨床徴候・内反の様子・実施された外科治療の内容・術後結果を確認した。

結果
:Hotz-Celsus法(HC法)・外眼角閉鎖縫合・眼瞼楔型切除を組み合わせた術式は、64頭では左右眼瞼に実施され、60頭では左右どちらかのみに実施された。外科治療全体の手術成功率は96%であり、残りの4%も2回目の手術にて眼瞼内反が解消した。HC法・外眼角閉鎖縫合・眼瞼楔形切除を組み合わせた術式では、99.21%が成功した。8歳以上の猫は、他の年齢群と比較して角膜分離症(角膜黒色壊死)が発生しやすい傾向にあり、37%が角膜分離症を併発していた。

結論
:我々の調査では、Hotz-Celsus法(HC法)・外眼角の閉鎖縫合・眼瞼楔型切除を組み合わせた場合が最も治療効果が高かった。患眼ではない側の眼瞼に対しても、予防的な外眼角縫合を実施したほうがよいだろう。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22129140

<訳者コメント・追記・感想>
「予防的な外眼角縫合 
Prophylactic lateral canthal closure」の考察をするための
結果情報がアブストラクトにないので、本文を確認しました。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/j.1463-5224.2011.00974.x
以下、本文より抜粋です。

片側眼瞼内反を有する猫のうち、14頭に反対眼の予防的外眼角縫合を実施し、46頭には実施しなかった。
予防的縫合をしなかった46頭中、8頭(17.39%)に、その後下眼瞼内販が発生した。
予防的縫合を受けた14頭すべてに、その後眼瞼内反は発生しなかった。

という結果から、内反のない反対側眼瞼に対しても、予防的縫合の実施を提唱しているようです。
(なお、文献内ではどのように外眼角を縫合するのか?については明記されていません)

<補足(蛇足)>
Hotz-Celsus法(HC法):眼瞼内反部に隣接する皮膚を、楕円形に切除する方法(イラスト②のこと)
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