飛鳥山動物病院 徒然日記

飛鳥山動物病院のスタッフブログです!

【文献紹介】症状がない犬猫に,胃腸粘膜保護剤を飲ませても,予防効果はないかもしれません.

久しぶりに,学術文献のご紹介です.

f:id:ujk_vet:20190107155329j:plain

突然ですが,「胃薬」というとどんなイメージですか?

『食べる前に,のむ!』=

 『症状が出る前に,予防的にのんでおく!』って印象,ありませんか?

 

2018年,アメリカ獣医内科学会(ACVIM)という団体から,

『犬猫の胃腸薬はこう使おうよ』という報告がなされました.

 胃酸分泌抑制剤のガスターやオメプラゾール,

粘膜をバリアするスクラルファートが主に検討されています.

 

 

f:id:ujk_vet:20190107114908j:plain

 

Stanley L.Marks, et al.“ACVIM consensus statement: Support for rational administration of 
 gastrointesutinal protectants to dogs and cats.” J Vet Interm Med. 2018 Nov-Dec; 32(6):1823-1840.

PMID:30378711
全文無料リンク 

 

この文献のPECO

P:胃炎・膵炎・肝臓病・腎臓病があるけど,

   症状(嘔吐)はなく,潰瘍や出血がなさそうな犬猫へ

E:胃酸抑制剤やスクラルファートを念のため投与すると

C:投与しない際と比べて

O:嘔吐や,胃腸の潰瘍・出血を予防してくれますか?

 

この文献では,過去の報告を参考に,

予防効果なさそうなので,念のための投与はいらないかも

腎臓や肝臓が悪くても,症状がないなら

 念のための胃粘膜保護剤は,つづけないでいいよ』と提案しています.

 

心配だから,お薬をのませつづけたい.

そうお考えになる飼い主様もいらっしゃいますが,

わんちゃん・ねこちゃんからすれば,

飲む薬は極力へらしてほしいですよね.

 

当院では引き続き,お薬はできる限り

「必要な時に,必要なものだけ」を心がけていきたいと思います.

 

この文献まとめを,日本語で読みたい方はこちらをどうぞ

【犬猫・文献】ACVIMが推奨する胃腸保護薬の適正使用マニュアル : 青銅色の小動物医療ジャーナルクラブ

 

<注意>

ご紹介している文献の学術情報は,その後の研究により,

より正しい内容や異なる方針に訂正・修正されることもあります.

また,すべての子に,胃腸薬の予防的投与が不要とも限りません.

本ブログの内容をそのまま鵜呑みにせず、疑問点や不安点は

当院,またはかかりつけの獣医さんへご相談をお願いします。

 

なお余談ですが,大正漢◯胃腸薬を「食べる前に飲む」理由は,

漢方薬は空腹時のほうが吸収されやすいから,だそうで

暴飲暴食による胃炎には予防的にのもうね,という意味ではないのだそうです.

 

獣医師 川口