【文献紹介】症状がない犬猫に,胃腸粘膜保護剤を飲ませても,予防効果はないかもしれません.
久しぶりに,学術文献のご紹介です.
突然ですが,「胃薬」というとどんなイメージですか?
『食べる前に,のむ!』=
『症状が出る前に,予防的にのんでおく!』って印象,ありませんか?
2018年,アメリカ獣医内科学会(ACVIM)という団体から,
『犬猫の胃腸薬はこう使おうよ』という報告がなされました.
胃酸分泌抑制剤のガスターやオメプラゾール,
粘膜をバリアするスクラルファートが主に検討されています.
Stanley L.Marks, et al.“ACVIM consensus statement: Support for rational administration of
gastrointesutinal protectants to dogs and cats.” J Vet Interm Med. 2018 Nov-Dec; 32(6):1823-1840.
この文献のPECO
P:胃炎・膵炎・肝臓病・腎臓病があるけど,
症状(嘔吐)はなく,潰瘍や出血がなさそうな犬猫へ
E:胃酸抑制剤やスクラルファートを念のため投与すると
C:投与しない際と比べて
O:嘔吐や,胃腸の潰瘍・出血を予防してくれますか?
この文献では,過去の報告を参考に,
『予防効果なさそうなので,念のための投与はいらないかも』
『腎臓や肝臓が悪くても,症状がないなら
念のための胃粘膜保護剤は,つづけないでいいよ』と提案しています.
心配だから,お薬をのませつづけたい.
そうお考えになる飼い主様もいらっしゃいますが,
わんちゃん・ねこちゃんからすれば,
飲む薬は極力へらしてほしいですよね.
当院では引き続き,お薬はできる限り
「必要な時に,必要なものだけ」を心がけていきたいと思います.
この文献まとめを,日本語で読みたい方はこちらをどうぞ
【犬猫・文献】ACVIMが推奨する胃腸保護薬の適正使用マニュアル : 青銅色の小動物医療ジャーナルクラブ
<注意>
ご紹介している文献の学術情報は,その後の研究により,
より正しい内容や異なる方針に訂正・修正されることもあります.
また,すべての子に,胃腸薬の予防的投与が不要とも限りません.
本ブログの内容をそのまま鵜呑みにせず、疑問点や不安点は
当院,またはかかりつけの獣医さんへご相談をお願いします。
なお余談ですが,大正漢◯胃腸薬を「食べる前に飲む」理由は,
漢方薬は空腹時のほうが吸収されやすいから,だそうで
暴飲暴食による胃炎には予防的にのもうね,という意味ではないのだそうです.
獣医師 川口