飛鳥山動物病院 徒然日記

飛鳥山動物病院のスタッフブログです!

【文献紹介】胆管炎があるわんちゃんは、胆のう摘出したほうがいいでしょうか?

海外の文献をふまえながら、病気や治療についてご紹介します。

今日のテーマは「胆管炎」と「胆のう摘出手術」です。

 

胆のうって何?

胆のうは、肝臓のそばにある袋のような臓器です。

消化を助ける液体(胆汁)を一時的に貯蔵する働きがあります。

 

胆管炎って??

胆汁は肝臓で作られ、腸に分泌されることで消化を助けます。

胆汁が通る経路を「胆管」と呼び、(胆のうも含まれます)

この部位に炎症が起きることを「胆管炎」といいます。

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顕微鏡で観察した胆管炎の写真です。

 

紹介文献

"Cholangitis and Cholansiohepatitis in Dogs: A Descriptive Study pf 54 Cases Based on Histopathologic Diagnosis  (2004-2014). "
Hariison, et al. J Vet Intern Med . 2018 Jan;32(1):172-180 PMID: 29131399
タイトル:犬の胆管炎と胆管肝炎 (2004-2014)

     病理組織学的診断に基づく54例の記述的調査

 

今回紹介する文献のテーマ (PICO)

P:胆管炎があるわんちゃんに

 I:胆のう摘出手術をしたら

C:しないわんちゃんと比べて

0:長生きが期待できますか?

 

調べ方

過去の医療データを確認してみたら、

胆管炎と診断されたわんちゃんが54頭いたので、この子達を調べました。

 

結果はどうでしたか?

胆嚢摘出手術を行わなかった子は、手術した子と比べて

2.1倍死亡リスクが高い、という結果でした。

13歳以上で胆管炎のある子は、13歳未満の若い子に比べて、

死亡リスクは5.0倍高くなりました。
Figure1


 結果としてどのように考えられるのですか?
13歳未満で胆管炎のあるわんちゃんには、

胆のう摘出手術をしたほうが長生きするのかもしれません。

適切なタイミングで、しっかりと手術を選択することが大切です。

 

今回の文献原文を英語で読みたい方

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29131399

今回の文献を翻訳で読みたい方

http://blog.livedoor.jp/asukayamaah/

 

補足・注意

本投稿は「とにかく胆のうの病気には、手術が一番です!」といった意図のものではありません。

胆のう疾患は、適切なタイミングでしっかり手術することが大切ですが、

それがいつなのか?その子にとって適切なのか?手術のリスクはどうか?

などの様々な要因をしっかりふまえる必要があります。

胆のう疾患をどう治療したほうがいいいのか?については、

飼い主様だけでご判断されずに、どうかかかりつけの先生にもご相談されるようお願いします。