飛鳥山動物病院 徒然日記

飛鳥山動物病院のスタッフブログです!

セミナー参加報告(アトピー性皮膚炎 Vet Derm Tokyo)

先日、皮膚科セミナーに参加しました

主催:Vet Derm Tokyo

テーマ:アトピー性皮膚炎・アポキルによる治療戦略

 

f:id:ujk_vet:20170621142759j:plain

 

アトピー性皮膚炎とは?

生まれつきの体質(アトピー)による、慢性的な痒みを起こす皮膚炎です

このアトピー性皮膚炎、実は一筋縄ではいかない、とっても厄介な疾患です

 

その理由は2つ

 ① 「アトピー性皮膚炎だ!」と診断するのがムズカシイ

 ②  診断できても、管理がムズカシイ

 

1.アトピー性皮膚炎の診断

アトピー性皮膚炎は、「他疾患の除外」により診断されます

痒い皮膚病は、アトピー性皮膚炎以外にも複数ありますので

まずは、それらひとつずつひとつずつ除外(試験的治療を実施)し、

それでも症状に改善がなければ、

やっと!はじめて!アトピー性皮膚炎と診断されるのです

この除外診断、食事アレルギーを除外するための除去食試験というものを含めると、

2ヶ月以上もかかることもあります…大変な工程ですね

 

2.アトピー性皮膚炎の治療

やっと診断ができても、治療がまた簡単ではありません

アトピー性皮膚炎は残念ながら完治しません

このため、長期的に治療を継続せねばなりません

 

治療薬の第一選択は、経口ステロイド剤です

即効性に優れたとてもいいお薬で、

短期服用では大きな問題は起こりにくいですが、

長期的に服用することで、

肝臓への負担・筋力の低下・副腎ホルモン産生異常を招くリスクを伴うため、

繊細な用量管理や定期的な血液検査が必要となる場合があります

 

長期的なステロイド服用による負担を軽減するために、

様々な治療が提唱されていますが

(シクロスポリン療法、インターフェロン療法、減感作療法など)

いずれも効果の発現がゆっくりである・薬剤費が高い…などの難点があります

 

このように、診断も治療も悩ましい犬アトピー性皮膚炎ですが、

近年、新しい治療薬として、経口剤の販売されました

オクラシチニブ(アポキル®)というお薬です

 

このお薬は、皮膚の痒さを発生させる物質(インターロイキン31)の

シグナル伝達を阻害することで痒さを軽減させます

経口ステロイド剤と同等の効果を有し、

かつ、有害事象が軽微であるというメリットがあります

 

今回参加したセミナーでは、特にアポキルの使用方法について、

詳細に学ばせていただきました

紹介された学術情報・治験例によると、副作用の少ないとてもいい治療薬のようですし

 

実際その後使用した経験からも、使いやすいお薬であると実感しています 

 

しかし、どの疾患にも言えることですが

「この治療法だけで大丈夫」ということはありません

飼い主様や、動物さんの背景・お考えに沿って、治療は複数選択できることが

私たちは大切だと考えております

今回学ばせていただいたアトピー性皮膚炎に関する治療法も、その一選択として検討し

飼い主様には、幅広い治療がご提案できるよう

今日以降も努めてまいります

 

獣医師 川口