飛鳥山動物病院 徒然日記

飛鳥山動物病院のスタッフブログです!

【文献紹介】同じ粘稠度の点眼なら、ヒアルロン酸添加の有無で角膜潰瘍の治癒に差は出ない?

Gronkiewicz KM., et al. 
"Effects of topical hyaluronic acid on corneal wound healing in dogs : a pilot study " 
Vet Ophthalmol. 2017 Mart;20(2):123-130.  PMID:27061134

タイトル:ヒアルロン酸点眼が犬の角膜潰瘍治療に及ぼす影響

目的:
   P:角膜に傷がある犬に
   E:ヒアルロン酸の点眼薬で治療すると
   C:ヒアルロン酸を含まない点眼薬に比べて
   O:治り具合に差があるでしょうか?

調べ方:角膜に傷のある犬6頭を、A群とB群に分け、別々の目薬で治療します

     A群:ヒアルロン酸入りの点眼

     B群:ヒアルロン酸の入っていない点眼

    どちらの点眼薬も、とろみ(粘稠度)は同じです

    定期的に角膜を確認して、傷の大きさを測定し、

    角膜の傷を治しづらくする成分(MMP)が涙内にどれだけあるか測定しました

   
結果:A群とB群で、傷の治る様子に差はありませんでした

推論:同じ粘稠度の点眼薬ならば、ヒアルロン酸が添加されていなくても

   治療効果に差がないのかもしれません

<原著>   
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27061134
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/vop.12379

<正式な翻訳 (アブストラクト)>

http://blog.livedoor.jp/asukayamaah/archives/8597748.html

 

<ちょっと脱線>

角膜についた傷を、角膜潰瘍といいます。

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角膜の傷を確認する検査としては、「フルオロセイン染色」が有名です。

写真(a)のように、潰瘍部分を黄色い島状に染めだしてくれます。

潰瘍が次第に改善すると、a→b→c→dといった経過で

しだいにしだいに、染色範囲と程度が減少していきます。

 

目に傷がついたかも…というときは、フルオロセイン染色も含め

しっかりと確認を行い、状態を把握することが大切です!

ご自身で判断してしまわずに、動物病院で診察してもらいましょう!

 

注意

本投稿の趣旨は「角膜潰瘍ヒアルロン酸点眼は意味がないよ」

という意図のものではありません。

文献著者の考察も「ヒアルロン酸と同じ治療効果が期待できる別の点眼があるかも!」というもので、角膜潰瘍へのヒアルロン酸点眼自体を

否定する内容ではありませんので、ご注意ください。

 

<文献を原文で読みたい方>

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27061134

<文献を翻訳で読みたい方>

http://blog.livedoor.jp/asukayamaah/archives/8597748.html