飛鳥山動物病院 徒然日記

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【文献紹介】犬の輸血反応について (前投与薬の評価)

Bruce JA., et al. 
"Effects of premedication and other factors on the occurrence of acute transfusion reactions in dogs. 

J Vet Emerg Crit Care. 2015 Sep-Oct;25(5):620-30.

 PMID:26109490

タイトル
:犬の急性輸血反応の発生に及ぼす輸血前投与薬およびその他要因による影響

研究デザイン
:回顧的研究(2008年-2011年)

目的
 P:血液製剤が投与された犬に
 E:前投与薬が使用されていると
 C:使用されていない場合と比較して
 O:投与24時間以内に発生する急性輸血反応に影響があるのか

動物
:民営化された二次診療施設を受診し、輸血が実施された犬558頭 (輸血事象として935回)

介入:なし

方法:輸血が実施された犬の医療記録を調査した。
   調査項目は、以下の通りである。
   臨床症状、体重、血液製剤の種類、輸血の理由、何回目の輸血なのか、輸血反応の有無、
   どのような輸血反応(TR)が発生したか、TRへの治療が実施されたのか、
   輸血前に前投与薬は使用されたか、使用された前投与薬の種類、
   前投与薬以外に使用された薬剤の有無、患者には免疫介在性疾患を有していたか、
   周術期の輸血であったか
   
結果

   136頭の犬において144件(15%)の急性TRが記録されていた。
   TRの最も一般的な臨床症状は、
   発熱のみ(77/144 53%)、または嘔吐のみ(26/144 18%)であった。
   TRにより6頭の犬が命を落とした(4%)
   TRの発生と、年齢(p=0.257)、性別(p=0.754) 、体重(p=0.829)、
   および前投与薬の使用(p=0.312)との間に相関はなかった。
   血液製剤の種類とTRの発生には相関が認められ(p<0.001)、
   濃厚赤血球製剤は最もTRが発生しやすく、血漿輸血では最も発生しにくい傾向にあった。
   免疫介在性疾患を有しているとTRが発生しやすい傾向にあり(p=0.015)、
   周術期の輸血に対してTRはほとんど発生していなかった(p=0.023)。

考察:調査中確認されたTRはほとんどが軽度であったが、一部に重篤な反応が観察され、
   (溶血、呼吸困難)、
また6頭がTRに関連して死亡していた。
   免疫介在性疾患はTRの発症に関連している可能性がある。

   濃厚赤血球製剤は他の血液製剤と比較してTRが発生しやすいようだ。
   前投与薬を使用することでTRの発生率は変化しなかったが、単独で評価した場合、
   抗ヒスタミン剤は急性TRの発生率を低下させるようである。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26109490

<コメント・ひとりごと>

「血液型が異なると輸血できない」というのは有名ですね。

異なる型の血液を輸血すると、強い副反応が出てしまうことがあります。

これを「輸血反応」とよびます。

 

人の代表的な血液型は、ABO (A B AB Oに分類します)とRh ですが

それ以外にも様々なタイプが存在しており、

献血で集められた血液は、輸血されるまでに複数の適合チェックが実施されます。

 

では犬や猫の場合はどうでしょうか?

犬や猫にも血液型がありますが、人医療ほど詳細に判明していません。

 

ですので、輸血前には実際に「患者の血液」「ドナーの血液」を混合し、

不適合反応がでないかの検査(クロスマッチ試験)が実施されます。

 

しかし、事前の血液型判定やクロスマッチ試験で

OK(適合)が出ていても、安心はできません。

それでもなお、重篤な副反応が稀に出てしまうためです。

 

今回、犬の輸血反応に関してまとめた文献をご紹介しました。

明日以降の輸血管理に、役立てていきたいと思います。

 

獣医師 川口