飛鳥山動物病院 徒然日記

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【文献紹介】犬の脂溶性薬剤中毒には、脂肪乳剤静脈投与が有効のようだ

Bates N., et al. 
"Lipid infusion in the management of poisoning: a report of 6 canine cases. 

Vet Rec. 2013 Mar 30;172(13):339.

 PMID:23423482

タイトル
:脂肪乳剤による中毒治療が施された犬の6症例

研究デザイン
:症例報告

背景:脂肪乳剤の静脈投与は、人医療では脂溶性薬物(特に麻酔薬や心毒性を有する薬剤)による中毒への治療に使用され、劇的な改善がもたらされている。


目的
 P:脂溶性薬剤のイベルメクチン・モキシデクチン・バクロフェン暴露で中毒症状を呈する犬に、
 E:脂肪乳剤の静脈投与療法を施した場合
 C:
 O:どのような治療反応が得られるのか・有害事象は発生するのか

動物
脂溶性薬剤に中毒を呈している犬6頭
   イベルメクチン(3頭)、モキシデクチン(2頭)、バクロフェン(1頭)
   犬の年齢は8週から14歳、体重は4-30kg

方法
脂溶性薬剤の摂取後、6時間から22時間の間に脂肪乳剤を静脈投与した。

結果
:6頭全てに治療効果が認められた。
   4頭は投与1時間以内に症状の改善が見られた。
   残りの1頭は投与2時間以内に、もう1頭は投与4.5時間以内に改善した。
   脂肪乳剤の血管外漏出による軟部組織の腫脹疼痛が1頭に発生したが、保存的管理で解決した。
   その他の有害事象は観察期間中認められなかった。
   全ての犬は中毒物質暴露後24-52時間以内 (脂肪乳剤投与の7-46時間後) に退院可能となり、
   退院後に明らかな後遺症は発生しなかった。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23423482

<コメント・ひとりごと>
バクロフェンはGABA作動薬の1種です。

人医療において脳脊髄疾患による痙縮時に使用されることがあります。

また、アルコール依存症への治療薬としても注目されているそうです。

動物に中毒が発生しやすい代表的な脂溶性薬剤は、フィラリア予防薬・NSAIDs・局所麻酔薬です。

2011年以降、海外では「動物の脂溶性薬物中毒に脂肪乳剤治療」という複数の報告があり、

私の勉強のために、そのうちの一つを紹介してみました。

アブストラクトでは、脂肪乳剤をどの程度の量・投与速度で使用したのか?

どのような臨床症状がある犬が、どのように改善したのか?明記されていませんでした。

本文を確認できたら、後日追記したいと思います。

 

獣医師 川口