飛鳥山動物病院 徒然日記

飛鳥山動物病院のスタッフブログです!

文献紹介(犬にオクラシチニブを長期投与しても、尿路感染症にはならないかもしれない)

Simpson AC., et al. 
"The frequency of urinary trac infection and subclinical bacteriuria in dogs with allergic dermatitis treated with oclacitinib:a prospective study. 

Vet Dermatlo. 2017 Oct;28(5):485-e113.

 PMID:28513001

タイトル
オクラシチニブを処方されたアレルギー性皮膚炎の犬における尿路感染症・無症候性細菌尿の発生頻度

研究デザイン
前向き研究

背景:オクラシチニブは選択的にヤヌスキナーゼを阻害し、犬のアレルギー性皮膚炎・アトピー性皮膚炎の掻痒緩和に用いられる。
 オクラシチニブ同様、犬の炎症性皮膚疾患に処方されるグルココルチコイドおよびシクロスポリンには、尿路感染症(UTI)発生頻度の増加が報告されている。

目的:オクラシチニブを投与されたアレルギー性皮膚炎の犬は、UTIおよび無症候性細菌尿が発生するのかを評価する。

動物
:アレルギー性皮膚炎の病歴を有する、2歳以上の家庭飼育犬55頭。全身への抗菌薬投与から少なくとも14日以上、シクロスポリンおよび全身へのグルココルチコイド投与から28日以上経過していることを組み入れ条件とした。

方法
:登録犬には尿検査および定量尿培養を実施した後、規定の用量に基づいてオクラシチニブが投与された(投与期間180日-230日)。尿路徴候の有無に関わらず、追跡調査および尿培養を実施した。研究中対象犬には全身への抗菌剤・他の免疫抑制剤は投与されなかった。

結果
:58日-280日(平均195日)の範囲で行われた尿検査・尿培養検査の追跡調査にて、調査された55頭中UTIが発生した犬はいなかった。2頭において、異常な尿路の臨床徴候が発生した。この2頭の尿検査・尿培養検査からはUTI や細菌尿を示す所見は得られず、徴候は自然治癒した。


結論
:UTIの既往歴や素因がない犬に、オクラシチニブを投与しても、UTI・無症候性細菌尿の発生は予期される副作用ではない。尿路感染が疑われるような臨床徴候や尿検査の異常所見がなければ、定期的な尿培養は必要ないだろう。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28513001

<訳者コメント>2018年 4/3
オクラシチニブ(アポキル®)に関する報告です。
「アポキルには長期投与で膀胱炎のリスクがあるよ」と言われていて、実際アポキルの能書にも
「膀胱炎2.7%、血尿/蛋白尿2.0%、多尿、細菌尿/白血球尿、腎障害0.7%が
 アメリカでの臨床試験中に発生しました(因果関係は不明です)」と記載されています。
このような背景で、新しく「実は、泌尿器への副作用はなさそうですよ」と言っているのがこの文献なのですが …本当にこの文献の通り、泌尿器系への副作用がないのかどうか??アブストからは確認しきれなかったので、
本文を読むことができたら後日追記したいと思います。

 

獣医師 川口