飛鳥山動物病院 徒然日記

2017年に開院予定の飛鳥山動物病院ブログです。

文献紹介(maropitantと犬慢性気管支炎)

紹介文献:Investigation of Neurokinin-1 Receptor Antagonism as a Novel Treatment for Chronic Bronchitis in Dogs.

J Vet Intern Med, vol 30, 2016.

M.Grobman, C.Reinero

「ニューロキニン-1受容体拮抗作用は犬慢性気管支炎への新規治療薬となりうるか」

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飼い主様には、とても難しい題名で申し訳ありません。

 

犬の慢性気管支炎という病気は、

2ヶ月以上続く咳が特徴の疾患です。

残念ながら特効薬はなく、薬で咳を抑えていかねばなりません。

 

一方、maropitant(セレニア®)という動物用胃腸薬があります。

この薬は、『NK-1受容体』という部位に作用することで効果を示します。

このような成分を『NK-1受容体アンタゴニスト』といいます。

嘔吐の中枢に作用し、気持ち悪さを抑えるために使用されます。

 

NK-1受容体は、嘔吐中枢以外にも様々な部位に存在します。

では、咳の中枢をこのmaropitantで抑えられないだろうか?

というのが、この文献のテーマです。

 

わかりやすく、表記すると…

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※ここでは、PECOが何か?については割愛させていただきます。

 

調査項目は、以下の通りです。

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薬を使用したわんちゃんの飼い主様にアンケートを実施して

「改善がありましたか?」とヒアリングしました。

また、BAL液細胞診という特殊な検査により、気管支内の炎症が消えていたかも調査しました。

 

結果です。

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飼い主様へのアンケートでは「咳症状は改善した」という傾向にありました。

しかし、気管支内の炎症には改善はなかったようです。

 

考察です。

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CCBというのは、犬慢性気管支炎のことをさします。

 

今回の飼い主様への調査法では、「プラセボ効果」が出ていた可能性があります。

プラセボ効果というのは、その薬に実は効果がなくても、

「この薬を飲んだのだから効果があるはずだ」と思うことで、

あたかも効果がでているように錯覚してしまう現象のことです。

 

しかし、実際にmaropitantは犬の慢性気管支炎に対して、

鎮咳(咳止め)効果があるのかもしれません。

この文献だけでは、結論は導けなさそうです。

 

加えて筆者は、「maropitantは、犬の慢性気管支炎の治療薬として適切ではない」

とも考察しています。

その理由は、maropitantoにCCBへの消炎効果が認められず、これでは鎮咳効果が認められるばかりであり、炎症による病気の進行が抑えられない、と考えたためのようです。

 

犬の咳に対して、maropitantoが適応になるのかどうか?

診療における処方の1選択となる可能性は秘めているようですが、

引き続き情報を集め、皆様の治療に還元していきたいと思います。

 

獣医師 川口