セミナー参加報告(アトピー性皮膚炎 Vet Derm Tokyo)
先日、皮膚科セミナーに参加しました
主催:Vet Derm Tokyo
テーマ:アトピー性皮膚炎・アポキルによる治療戦略
アトピー性皮膚炎とは?
生まれつきの体質(アトピー)による、慢性的な痒みを起こす皮膚炎です
このアトピー性皮膚炎、実は一筋縄ではいかない、とっても厄介な疾患です
その理由は2つ
① 「アトピー性皮膚炎だ!」と診断するのがムズカシイ
② 診断できても、管理がムズカシイ
1.アトピー性皮膚炎の診断
アトピー性皮膚炎は、「他疾患の除外」により診断されます
痒い皮膚病は、アトピー性皮膚炎以外にも複数ありますので
まずは、それらひとつずつひとつずつ除外(試験的治療を実施)し、
それでも症状に改善がなければ、
やっと!はじめて!アトピー性皮膚炎と診断されるのです
この除外診断、食事アレルギーを除外するための除去食試験というものを含めると、
2ヶ月以上もかかることもあります…大変な工程ですね
2.アトピー性皮膚炎の治療
やっと診断ができても、治療がまた簡単ではありません
アトピー性皮膚炎は残念ながら完治しません
このため、長期的に治療を継続せねばなりません
治療薬の第一選択は、経口ステロイド剤です
即効性に優れたとてもいいお薬で、
短期服用では大きな問題は起こりにくいですが、
長期的に服用することで、
肝臓への負担・筋力の低下・副腎ホルモン産生異常を招くリスクを伴うため、
繊細な用量管理や定期的な血液検査が必要となる場合があります
長期的なステロイド服用による負担を軽減するために、
様々な治療が提唱されていますが
(シクロスポリン療法、インターフェロン療法、減感作療法など)
いずれも効果の発現がゆっくりである・薬剤費が高い…などの難点があります
このように、診断も治療も悩ましい犬アトピー性皮膚炎ですが、
近年、新しい治療薬として、経口剤の販売されました
オクラシチニブ(アポキル®)というお薬です
このお薬は、皮膚の痒さを発生させる物質(インターロイキン31)の
シグナル伝達を阻害することで痒さを軽減させます
経口ステロイド剤と同等の効果を有し、
かつ、有害事象が軽微であるというメリットがあります
今回参加したセミナーでは、特にアポキルの使用方法について、
詳細に学ばせていただきました
紹介された学術情報・治験例によると、副作用の少ないとてもいい治療薬のようですし
実際その後使用した経験からも、使いやすいお薬であると実感しています
しかし、どの疾患にも言えることですが
「この治療法だけで大丈夫」ということはありません
飼い主様や、動物さんの背景・お考えに沿って、治療は複数選択できることが
私たちは大切だと考えております
今回学ばせていただいたアトピー性皮膚炎に関する治療法も、その一選択として検討し
飼い主様には、幅広い治療がご提案できるよう
今日以降も努めてまいります
獣医師 川口