飛鳥山動物病院 徒然日記

飛鳥山動物病院のスタッフブログです!

アイちゃん(虹の橋)

私が獣医になりたての頃、勤務先に猫が運び込まれました。

交通事故にあったのか、全身ボロボロの若い外猫ちゃん、

後足1本が再建困難で、やむなく「断脚」となりましたが

幸いに命をとりとめました。

 

その後ぐんぐん回復し、3本の足で駆け回る程元気に。

しかし、「事故で足がない」せいか、なかなか里親は見つからず、

縁もあって、我が家に迎え入れることになりました。

名前は「アイシャ(アイちゃん)」、三毛猫の女の子です。

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当時独身で、一人さびしく過ごしていた私。

急に始まったアイちゃんとの「二人暮らし」は、

とてもとても、きらきら充実していました。

 

愛くるしくて、だっこされるのが大好きな、甘えんぼアイちゃん。

ふかふかの毛布で添い寝するのが一番のお気に入りでした。

どんなに仕事が遅くなっても、窓辺でいつまでも帰りを待っていてくれて

そんな健気な姿にも、毎度心が温まったものです。

 

そんなすばらしい生活は、ある日突然の病気で崩れ去ります。

急にご飯を食べず、何度も吐くようになったアイちゃん。

なんで?昨日まであんなに元気だったのに??

 

慌てて勤務先に連れて行き、検査したところ

「尿管損傷による水腎症 急性腎不全」

もともと事故で全身を激しく損傷していた子です。

事故からかなり時間が経過してから、

事故時に損傷していた尿管が閉塞を起こし、重篤な腎不全が発生した疑いでした。

 

助かるのなら、なんでもする!そのために獣医になったんだ!

そう思い、できうる検査と医療をすべてアイちゃんに施しました。

 

レントゲン(消化管造影、尿管造影)、エコー、血液検査を何度も実施。

血管から点滴し、鼻にカテーテルを入れ、酸素室で集中管理。

それでも改善がないため、わらをもつかむ思いで手術もしました。

手術中に亡くなる可能性もありました。

幸い、手術後に目は覚ましたものの、

全く改善はなく、腎機能はさらにさらに悪化していました。

 

できることは尽き、もういつ急変してもおかしくない状態。

酸素室の中で苦しがるアイちゃんを、なでてあげたくても、

ドアを開けると、もっと苦しくなるのです。

だっこも、添い寝もしてあげられません。

あとはICUのガラス越しに我が子を見つめるしかない。

そばで見ているしかできない。無力でした。

 

やがて、ICUの中で呼吸がとまり、アイちゃんはそのまま天に召されました。

急に嘔吐し始めて、わずか3日目のことでした。

 

亡くなった後は、後悔の日々でした。

なんで、もっと早く異常に気付いてあげられなかったのか。

なんで、最期の時をこんなに苦しめてしまったのか。

苦しい我が子に、バリウムを飲ませ、鼻にカテーテルをいれ、ICUに押し込み…

あんなにも検査治療で苦しめる必要があったのだろうか?

果ては、ICU の中で、たった一人で旅立たせてしまった。

大好きだった抱っこも、ふかふか毛布の添い寝も、してあげられなかった。

後悔と無念で、食事も喉が通らない日々が続きました。

 

あれから、たくさん勉強して、

様々な方針や選択を、飼い主様へ提案できるようになりました。 

もしもあの頃にもどれたなら、

今の自分なら、きっとこうしてあげられるのに…

しかし、叶わない現実に、やりきれない思いです。

 

だからこそ、今、目の前の飼い主様とご家族へ、

すこしでもお役立ちになれること。

それが、アイちゃんへの弔いとなるのではと、願うばかりです。

 

長文、失礼いたしました。

 

アイちゃん、また会いたいよ。

 

飛鳥山動物病院 代表

川口 悠爾